夏休みの自由研究に『水墨画』を!〈その3・墨の続き〉

墨のことを、もう少しお話します。

墨には松の枝などを燃やして取る煤(すす)を原料にした『松煙墨(しょうえんぼく)』と

菜種油など油を燃やして取った煤(すす)を原料にした『油煙墨(ゆえんぼく)』があります。

『松煙墨』は少し青みがかった色をしているため『青墨』とも呼ばれています。

水墨画で使うのは、この『松煙墨』、つまり『青墨』です。

お友だちの皆さんがお習字で使っているのは『油煙墨』です。


煤は炭素の微粒子ですが、この2種類の墨の原料となる煤の粒子には違いがあります。

油煙で取れる煤の粒子は細かく、均一な大きさをしています。

松煙で取れる煤の粒子は油煙より大きめで、その大きさも均一でなく大小のムラがあります。

そのため、濃墨で書くお習字の文字は『油煙墨』の方が滑りが良く、艶のある文字を書くことができます。

水墨画はその名の通り、水をたっぷり使って、墨の濃淡の美しさを表現します。

水墨画で用いる『松煙墨』=『青墨』は、粒子に大きさのムラがあるため、

作品が仕上がった時、墨の濃淡の表現だけでなく、光の当たり方によって、見る角度によって、

墨の粒子が導く立体感と、深みを感じることができるのです。

水墨画は墨一色で表現されるのに、いろんな色を感じることができる。


「墨に五彩あり」などと言われますが

実は化学的にも裏付けされた部分もあるのです。

しかしやはり「墨に五彩あり」の本当の意味は、

鑑賞者の心のひだで感じる色のことだと思います。

それはモノクロ写真に感じるものに近いのではないでしょうか。

カラー写真よりも、モノクロ写真に

より多くのドラマを感じることはないですか?

情報が少なければ、人の心は欠けた部分を補おうとします。

その心の動きが加わることで、作品をより印象深く感じるのかもしれません。

さて、次回は紙(和紙)についてお話します。




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墨美神のことだま

Japanese ink painter 大臣賞受賞 水墨画家 樋口鳳香の描く"墨美神®︎(登録商標)”は かつてない水墨による美人画の表現 墨のにじみという偶さかに悠久の美を見つめ、 かぐわしき美神たちを表現します 着物を着付けるように表装する 創作掛軸『墨美神®︎きもの掛軸』『墨美神®︎着物カルトナージュ額装』など展開 live painting、展覧会情報をお伝えします

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